転勤などの配置転換は断れないのか

Last Updated on 2021年1月6日 by よも

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会社は配置転換することができる

会社は、従業員に対して従来とは異なる業務につくことを命じたり、従来とは異なる場所で勤務すること(転勤)を命じることができます。

配置転換の目的は、欠員の補充、上級職への抜擢、職務能力の向上、取引先との癒着防止などがあります。

通常の場合、従業員は配置転換命令を拒否できません。

転勤命令を拒否したい場合

転勤は、本人が望んで受け入れるのであれば何も問題ありませんが、家庭の事情や家族の反対などで受け入れがたい気持ちになることもあります。

転勤しろと言われたらどうにもならないものでしょうか。

いくつか可能性があります。

就業規則はどうなっているか

まず、就業規則に転勤についての定めがない場合です。

配置転換は法律的には就業規則の定めによって実施されます。したがって、就業規則に定めがなければ転勤命令を出せません。しかし、配置転換についてふれていない就業規則はほとんど無いと思われます。

雇用契約はどうなっているか

次に、雇用契約で勤務場所が限定されている場合は、会社は転勤を強制できません。

労働条件通知書や雇用契約書で勤務場所が明記されていればそれを根拠にすることができます。また、文書がなくても、入社時に口頭で転勤は無いという約束があるのであればそれも根拠になります。

転勤命令が不当ではないか

次に、権利濫用の問題があります。

転勤命令が「権利濫用」に当たればその転勤命令は無効になります。

判例によると、次のような場合は権利濫用と判断されます。

① 業務上の必要性が存しない場合
② 不当な動機・目的をもってなされたものである場合
③ 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情のある場合

これに該当しないと権利濫用になりません(T事件最高裁昭和61年7月14日第二小法廷判決)。

①の業務上の必要性については、定期的な異動の必要性など、会社としてはいろいろと理由付けが可能なので、この点を争うのは難しいでしょう。

②の不当な動機目的については、内部告発をしたとか、その他正当な理由で上司に反抗したことに対する懲罰的な人事でああれば、主張できる事実があれば可能性がでてきます。ただし、会社から懲罰的なものではないと主張されたときになかなか証拠を示すことが難しいのが難点です。

③については次の項で説明します。

著しい不利益を受けないか

③の著しい不利益については、不利益の程度によります。

これまでの裁判例をみれば「共稼ぎなので土地を離れられない」「家を建てたばかりだ」「子どもを転校させたくない」「英語が苦手なので海外に行きたくない」「単身赴任はしたくない」といった理由では転勤を断わる理由としては弱いようです。

とは言うものの、どこから「著しい不利益」にあたるかは、明確な線引きがあるわけではありません。上記に該当する場合でも人によって負担の軽重は様々なので一律にあきらめる必要はありません。

なお、転勤することにより、家族の生命、身体の危険にかかわる場合や、家庭崩壊が目に見えている場合は、転勤を断る正当な理由になると思われます。家族が重病であるような場合です。

受け入れがたい場合には、上司に家庭の事情を説明し再検討をお願いすることから始めましょう。

転勤を拒否すればどうなるか

どうしても転勤しろということであれば、それを受け入れるか、会社を辞めるか、受け入ないか、いずれかの選択をしなければなりません。

転勤命令を受け入れないと申し出たとき、転勤命令を撤回する会社もあると思いますが、会社によっては解雇を含む懲戒処分を科してくるかもしれません。

労働契約法第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

その場合、正当な理由があれば、上記の条文を根拠に解雇無効を争うことができます。

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まずは、社内の相談窓口や労働組合などへの相談、労働局に設置されている個別労働紛争調整委員会のあっせん、労働審判、裁判などの方法によって、解雇無効を求めて争っていくことになります。

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転勤以外の配置転換

配置転換には担当業務の変更もあります。

基本的には上述した転勤の場合と同じで、命令を拒むことはできず、拒めるケースは限定的です。

例えば、労働条件通知書等で業種が事務員と明記されているのに、営業に移ってくれと言われた場合は、一応、当初の雇用条件をたてに断ることができます。一応というのは、採用時と会社の事情が変わって、会社の言い分に合理性がある場合は、認めざるを得ない場合があるからです。

近年は経営環境が急激に変わることも多く、所属していた部門の縮小など、会社としてやむを得ない事情が発生することが多々あるからです。

ただし、特殊な資格や技術を持った人を、その資格や技術を生かせない業務に配置転換することは、労働契約書の記載にかかわらず本人の同意なしにはできません。

もちろん、嫌がらせなど、不当な目的等による配置転換は拒むことができます。