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相続

相続放棄が必要な場合もある

Last Updated on 2020年10月18日 by よも

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相続放棄とは

親が借金をかかえたまま亡くなったときは、相続をすると、借金も引き継ぐことになります。

相続した財産で払える範囲であれば良いのですが、もらえる財産を上回る借金があれば大変なことになります。

こういう場合、「相続放棄」という手段があります。

相続放棄とは、一切の遺産について権利を放棄してしまうことです。

借金などの負の遺産だけを放棄することはできません。相続放棄をすると、預金や不動産などについても同時に放棄することになります。

相続放棄には期限がある

手続きの期限に注意が必要です。期限を過ぎてしまえば、相続したことになります。

相続放棄の期限について、民法第915条は、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内と定めています。この期間を「熟慮期間」といいます。

熟慮期間の開始は「相続があったことを知ったときから」です。一般的には、亡くなった日からになります。もし、死亡したことを知らなかったときは、知ったときからになります。ただし、普通は肉親の死を知らないということはないだろう、と思われるので、知らなかったことを納得させる理由が必要です。

3ヶ月以内に、借金の有無をしっかり調べなければなりません。

遺産の調査をする

熟慮期間の間に、預貯金を払い戻すなどして、一部の財産を使ってしまえば相続放棄ができなくなることがあるので注意しましょう。

3ヶ月という短期間では調べがつかないというほど複雑な場合は、家庭裁判所に対し、「熟慮期間延長の申立」を行えば、熟慮期間を延ばしてもらえる可能性があります。

3ヶ月経過してしまってからの相続放棄が認められる「特別な事情」についての判例があります。

最高裁判所第二小法廷昭和59年4月27日判決
相続人が、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて、その相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において上記のように信じたことについて相当な理由があると認められるときには、相続放棄の熟慮期間は相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識しうるべき時から起算すべきものである。

叔父とは長年に渡って一切の交流がなく、通夜や葬式にも出ていないので、叔父に借金があるとは思ってもいなかったようなケースです。ケースバイケースで判断されるので、何とも言えませんが、認めれることがあるという一例です。

遺産分割協議での放棄は危険です

遺産分割協議で「自分はいらない」というのも広い意味では財産放棄です。しかし、遺産分割協議での放棄と「相続放棄」は違います。

遺産分割協議書に「私は財産を一切受け取らない。その代わりに借金も負いません」と書いてあったとしても、債権者は請求することができます。

第三者である債権者に対抗できるのは、家庭裁判所に申述することによって行う「相続放棄」だけです。

相続放棄の手続き

相続放棄は家庭裁判所に手続きします。自分でやることもできますが、なるべく司法書士等の専門家に依頼した方が良いようです。依頼するときは、事前に料金を聞いてから依頼しましょう。

家庭裁判所に相続放棄の申述

具体的には、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。受理されると、裁判所から相続放棄申述受理通知書という書面が交付されます。これで、相続放棄の申立て手続きは完了です。

相続放棄申述受理通知書のコピーを相続債権者などに送付します。再発行されないので、必ずコピーを提出してください。

上記のコピーではなく、相続放棄申述受理証明書を求めてくることもあります。相続放棄申述受理証明書は、同封されている相続放棄申述受理証明申請書を用いて、家庭裁判所へ交付申請をおこないます。申請すれば何通でも取得することができます。

相続放棄の具体的な手続きは、下記の裁判所のサイトを参照してください。申立書の書式や記載例も掲載されています。

なお、相続放棄は、相続人だけでなく遺言で遺贈を受けた人もすることができます。

限定承認

負債があるのは確実であっても、それを上回る資産があるなら、相続放棄する必要はありません。

次のようなときに、簡単に判断すると損をしてしまうかもしれません。

□ 証書が見つからないので親の借金の具体的な金額が分からない
□ 通帳が見つからないので親の預金の具体的な金額が分からない
□ 生前に交通事故を起こしていたが、その損害賠償債務の金額が決まっていない。

この場合に、限定承認という手段があります。

限定承認とは、相続財産から必要な支払をして、余りがあったら相続人が相続できる手続きです。調査の結果、債務超過になっていたら借金を相続する必要はありません。

ただし、

限定承認をするためには、共同相続人が全員協力して家庭裁判所に申述をしなければなりません。相続人のうち、1人でも単純承認をしてしまったら、限定承認はできません。

また、熟慮期間(3ヶ月)を過ぎてしまったり、その期間内に遺産の一部を使ってしまっていれば限定承認を使えません。

他の相続人にも連絡すべきです

相続放棄は一人でもできますが、他の相続人に連絡しないとトラブルになります。

兄弟が何人かいて、自分だけが借金の存在に気がついて、一人でこっそり相続放棄をすると、他の兄弟が借金を背負うことになってしまいます。絶対にもめます。

子どもが全員放棄して、もしオジ・オバがいる場合はそちらが相続人になってしまいます。オジ・オバが亡くなっていれば、その子、つまりイトコたちが相続人になります。オジ・オバ・イトコ達に、なぜ自分達が放棄するか説明し、その人たちにも相続放棄を勧めるなどの誠意ある対応をする必要があります。

連帯保証は放棄できません

親が誰かの連帯保証人になっていたとしても、相続放棄すれば大丈夫ですが、親が存命中に、子どもが親の借金の連帯保証人になっていた場合、連帯保証は放棄できないので、相続放棄をしてもしなくても借金の支払い義務を負うことになります。

遺族年金は放棄しても受け取れます

遺族年金は相続財産ではないので、相続放棄をしても遺族年金を受け取ることができます。

生命保険は放棄しても受け取れることがあります

亡くなった親以外の人、例えば子どもが受取人として指定されている保険金は、相続放棄をした子どもも保険金を請求できます。

親が受取人となっている生命保険金は相続放棄をした子どもは相続することができません。

相続財産管理人が必要になることがあります

法定相続人全員が相続放棄した場合は、不動産などの管理などのために相続財産管理人が必要になることがあります。

相続財産管理人が必要になるときは、管理のための費用を負担しなければならなくなります。

相続財産管理人が必要かどうか、管理のための費用をいくらにするかなどについては、相続放棄の申述をした後に裁判所が決定します。