Last Updated on 2019年11月27日 by よも
労災保険における労働者とは
労災保険は労働者とその遺族に給付を行います。この場合、労働者とは何かという定義が問題になることがあります。
労働者とは、会社に雇われて仕事をしているすべての人です。アルバイトやパートタイマーが対象になるのはもちろん、国籍も関係ありません。
採用内定者が研修出社しているときの事故では、実習を伴っているか、アルバイト代が支払われているかなどを総合的に判断して労働者認定をすることになっています。
派遣社員には、雇用関係のある派遣元の労働者として労災保険が適用されます。
建設業での請負による事業では、原則として元請が一括して労災保険に加入しているので、元請が保険給付書類に証明をしなければなりません。
同居の親族は、原則として労働者として扱われません
ただし、他の社員と同様に働いて、同様の給与を受けている場合には対象となることがあります。
役員は原則として労災保険の対象になりません
役員が仕事上のことでケガや病気になった場合、労災が使えないだけでなく、健康保険も使えません。健康保険は仕事上でのケガや病気には給付をしてくれないのです。(隠して受診することもあるかもしれませんが法律違反です)
登記上は役員であっても、実態は一般労働者と変わらない働き方をしている役員を「使用人兼務役員」といいます。使用人兼務役員は、使用人としての部分にだけ労災が適用されます。取締役工場長が、工場の中で機械を操作していて被災したような場合です。ただし、役員として工場を巡視しているときの被災であれば認定は難しくなります。
従業員が子会社等に役員として出向している場合は、元の会社で従業員としての身分を保っていたとしても、出向先の会社で役員であれば、労災は適用されません。
労災保険における遺族とは
遺族(補償)年金を受ける権利のある遺族は、労働者の死亡時にその労働者の収入によって生計を維持していた配偶者(内縁関係も含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(受給順位の順)です。
妻以外の遺族には、生計維持関係の他にも条件が付きます。
夫:60歳以上又は障害
子:18歳に達する日以後最初の3月31日まで又は障害
父母:夫と同じ
孫:子と同じ
祖父母:夫と同じ
兄弟姉妹:子と同じか夫と同じ
これらの受給資格者のうち、最も先順位の者が受給権者となって、遺族(補償)年金を受給します。つまり、妻がいる場合は、妻に全額支給されます。最も先順位の受給権者が複数になってしまう場合には支給額が等分されてそれぞれに支給されます。
上記の受給権者がいない場合は、55歳以上60歳未満の夫、父母、祖父母、兄弟姉妹の順で60歳までは支給停止ですが受給権をもちます。
配偶者については、いわゆる内縁関係にある者も、一定の証拠があれば労災給付を受けることができます。法律上の妻がいて、かつ、内縁の妻がいるような場合には、基本的には法律上の妻が労災の給付を受けることができます。法律上の妻との関係が、全く形骸化しているというケースでは、例外的に内縁の妻の権利が認められたことがあります。
最先順位の遺族が死亡や婚姻などにより受給権者でなくなった場合は、次順位の遺族が受給することになります。この制度は転給といって労災保険独自の制度です。
国民年金や厚生年金から支給される遺族年金は、最先順位者だけしか年金を受け取れませんが、労災保険の遺族年金は、先順位者が受給権を失っても、受給資格者がいる限り、年金が支給され続けます。