Last Updated on 2021年1月12日 by よも
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解雇とは
解雇とは、労働者が辞める意思がないのに、使用者の方から一方的に辞めさせれることです。
解雇には、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇があります。
普通解雇とは
整理解雇、懲戒解雇以外の解雇です。
次のような場合の解雇です。
・勤務成績が著しく悪く、指導を行っても改善の見込みがないとき
・健康上の理由で、長期にわたり職場復帰が見込めないとき
・ 著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、改善の見込みがないとき
整理解雇とは
会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇です。
労働組合との協議や労働者への説明を行うとともに、次のことが条件になります。
・人員削減を行う必要性を説明できる
・できる限り解雇を回避するための措置を尽くす
・解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であること
懲戒解雇とは
従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに懲戒処分として行うための解雇です。
就業規則や労働契約書にその要件等が明示されていることが条件です。
解雇権の濫用は無効
解雇に伴う紛争を防止するため、労働契約法では解雇に関するルール定めています。
労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇が、権利濫用に該当して無効となることは、これまでも判例法理として確立していました。この条文は、その判例法理を法制化したものです。
「客観的に合理的な理由」とは、誰が見ても解雇はやむを得ないという理由があるかどうかということですが、個別の事例について、特定の解雇の理由が、客観的で合理的であるかないかを判断することはなかなか難しいことです。
「社会通念上」という部分も、一般的に世の中で思われていること、という意味ですが、これも、具体的に線引きするとなると大変難しいことです。
どうしても当事者間の合意がまとまらなければ、裁判を提起し、裁判官に判断してもらうしかありません。
解雇についての法令上の制限
次の場合は法律の規定により解雇が禁止されています。
① 業務上傷病により休業する期間及びその後30日間の解雇
② 産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇
上記の2つの期間中は、たとえ懲戒相当の事案があったとしても解雇できません。
③ 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
④ 労働者が労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
⑤ 労働組合の組合員であること、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇
⑥ 女性であること、あるいは女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇
⑦ 育児休業の申出をしたこと又は育児休業をしたことを理由とする解雇
⑧ 介護休業の申出をしたこと又は介護休業をしたことを理由とする解雇
⑨ 労働者が都道府県労働局長にたいして個別労働関係紛争の解決援助を求めたことを理由とする解雇
⑩ 公益通報をしたことを理由とする解雇
⑪ 裁判員となったり、裁判員の職務をするために休暇を取ったこと等を理由とする解雇
解雇の予告
解雇するときには、30日前までの解雇予告が必要です。解雇予告をしないで即時に解雇しようとする場合は、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。
解雇の手続き
解雇するときは、解雇することを通知しなければなりません。
労働基準法第20条
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。
もし30日前に解雇予告をしなかった場合、使用者は30日分以上の平均賃金を支払う義務が生じます。
もし15日前に解雇予告すれば、使用者は15日分以上の平均賃金を支払う義務が生じます。
解雇予告の例外
1.解雇予告が除外されている労働者
① 日々雇い入れられる者(1ヶ月を超えて引き続き使用される場合を除く)
② 2ヶ月以内の期間を定めて使用される者(各々の契約期間を超えて引き続き使用される場合を除く)
③ 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者(各々の契約期間を超えて引き続き使用される場合を除く)
④ 試の使用期間中の者(14日を超えて引き続き使用される場合を除く)
2.使用者からの申請による場合
① 天災事変その他やむを得ない理由で事業の継続が不可能になり、労働基準監督署長 の認定を受けたとき。
② 労働者の責に帰すべき事由によって解雇するときで、労働基準監督署長の認定を受けたとき。
懲戒解雇でも予告手当をもらえる場合がある
前項の例外の説明、つまり予告手当をもらえないケースのなかに、「労働者の責に帰すべき事由によって解雇するときで、労働基準監督署長の認定を受けたとき」というものがあります。
これは「労働者の責に帰すべき事由」と「労働基準監督署長の認定」がセットのときに、予告手当を支払う必要がないという規定です。逆に言えば、事業主が労働基準監督署長の認定を申請しない、あるいは申請しても認定されなかったときは、懲戒解雇であっても予告手当の支払が必要です。
解雇理由証明書と退職証明書
解雇理由証明書と退職証明書は紛らわしいので注意が必要です。解雇理由証明書は解雇されたときに求める書類です。退職証明書は解雇かどうかに関係なく退職に際して求める書類です。
解雇理由証明書
従業員から作成を求められたときは、解雇理由を記載した書面を作成して本人に渡さなければならないことが法律に定められています。
労働基準法第22条2 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
解雇の予告は口頭でもできることになっていますが、解雇理由証明書は文書で交付する義務があります。ただし、「退職の日までの間において」「請求した場合にあっては」ですから、退職日前に請求しなければ手に入りません。
解雇に納得ができず、会社に解雇の取り消しを求めたいときは、会社はどういう理由で解雇するのかはっきりさせるためにも「解雇理由証明書」を要求しましょう。
退職証明書
退職証明書は、退職の理由にかかわらず作成されるもので、退職後の国民年金や国民健康保険の手続き等に使用することがあるので、求めなくても会社から発行されることが多い書類です。
この退職証明書に退職(解雇)の理由を書いてもらうことができるので、解雇理由証明書を請求しないうちに退職してしまった場合は、退職証明書に解雇理由を記載してもらって解雇理由証明書の代わりに使います。
労働基準法第22条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
退職証明書には、以下の事項が記載されています。これも、「請求する」ことが法律上の条件なので、請求しないともらえないことがあります。
□ 退職する人の名前
□ 退職理由(解雇の場合は解雇の理由)
□ 雇用されていた期間
□ 従事していた業務の種類
□ 会社内における地位
□ 賃金
□ 退職証明書を発行した日の日付
□ 会社の代表者または責任者の氏名と印鑑
退職証明書、解雇理由証明書いずれの場合も、労働者が希望しない事項を書いてはならないことになっています。事実に反する内容、不当におとしめる記載があれば訂正を求めましょう。
これらの証明書を会社が出してくれないとすれば、あきらかに法律違反なので労働基準監督署に申告しましょう。相談という形ではなく「労働基準法違反の申告にきました」と明確に伝えた方がよいでしょう。